東芝のがん検査キットの特徴は?マイクロRNAの概要や癌の特徴を解説
がん検査キットの開発には様々な大手企業が参加を表明しており、東芝もその一社として積極的に実証を重ねているようです。
ただ、「東芝のがん検査キットがいつ販売されるかわからない」「東芝のマイクロRNA検出技術の詳細を知りたい」と考える方も多いでしょう。
この記事では、東芝のがん検査キット開発に関する2024年の最新情報や、東芝が開発したマイクロRNA検出技術のことを詳しく解説します。
東芝のがん検査キットは2020年から実証試験中?
各メディアの情報によると、東芝は2020年からマイクロRNAを用いたがん検査の実証試験やがん検査キットの開発を開始したとのこと。
なお、東芝のマイクロRNAチップ自体は2019年に発表されており、販売予定価格を20,000円以下に調整しているようなので、製品化されれば一般的ながん検診よりも費用の負担を抑えて実施できることが予想できます。
ただ、2021年〜22年の実用化を目指していたそうですが、メディアの情報を見る限り、2024年時点で東芝ががん検査キットを市場販売している様子は確認できません。
マイクロRNAを用いたがん検査キット自体は販売されているものの、東芝との資本関係、共同研究の形跡は見受けられないので、別のプロジェクトと考えられます。
マイクロRNAを用いた東芝のがん検査キットが気になる方は、引き続き続報を待つほかないでしょう。
東芝が開発した「マイクロRNA検出技術」とは
東芝は国立がん研究センターや東京医科大学の協力を受け、がん検査キットに用いる独自のマイクロRNA検出技術を開発したとのこと。
なお、マイクロRNAとは血中に含まれるRNAという物質の一種であり、腫瘍細胞周辺で特異な動きを見せる性質から、がん検査における有用性を見出されています。
東芝の技術はまだがん検査キットとして実用化されていませんが、ここでは現時点で判明しているマイクロRNA検出技術の特徴を見ていきましょう。
2時間以内にリスクがわかる
東芝が開発したマイクロRNA検出技術は、検体の解析から2時間以内でリスク判定まで完結するようです。
がん検査キットによっては結果がわかるまでに1ヶ月程度かかる点も考慮すると、東芝が謳う検査スピードがどれほど圧倒的かがわかるでしょう。
ただ、マイクロRNA検出技術ががん検査キットとして実用化された際は、採取した検体を指定検査機関などへ郵送しなければならない可能性があります。
つまり、輸送時間は別途発生することが予想されるため、実際のところはプラス数日程度を想定しておいた方が良いかもしれません。
99%の精度を誇る
東芝のマイクロRNA検出技術は、全13種のがんリスクを99%という高精度で判定できるとのこと。
一般的ながん検査キットの精度は80%〜96%ほどなので、東芝が今後販売する製品は日本国内でトップクラスの正確性となるのではないでしょうか。
しかし、数値からもわかる通り100%の精度は保証されていないため、仮にがん検査キットで低リスクがでても以下のような症状が見られる場合は、医療機関での検診も検討するのがおすすめです。
- 発熱や倦怠感がある
- 血圧が高い
- 体のどこかに痛みがある など
なお、がん検査キットは高リスク判定のユーザーに対して、専門スタッフによる無料アドバイスや医療機関の紹介を行っているケースがあります。
東芝がどのようなサポート体制を設けるかはわかりませんが、販売がスタートした際は、事前に確認しておくと良いでしょう。
ステージ0から検知できる
東芝のマイクロRNA検出技術は、ステージ0期の早期からがんリスクを検知できるとのこと。
癌は進行度に応じて生存率が変動し、末期のステージ4になると大幅に水準が下がるため、完治を目指すには早期発見が何よりも重要なのです。
ここでは具体的に、早期発見が難しく生存率が最も低い部類に入るすい臓がんの5年生存率をチェックしておきましょう。
- ステージ0期〜1期:49.5%〜54.1%
- ステージ2期:21.9%〜23.8%
- ステージ3期:6.0%〜7.7%
- ステージ4期:1.2%〜1.6%
参考:膵臓がんの末期症状と検査方法、5年生存率について|GENE CLINIC GROUP
上記の通り、すい臓がんの生存率はとても低い傾向にありますが、ステージ0期〜1期で治療を始められれば5年生存率は50%なので、ある程度完治が見込めます。
ステージ0期〜1期なら5年生存率90%を超えるがん種別もあるため、がん検査キットを定期的に受検することで、完治の確率を飛躍的に高められるでしょう。
マイクロRNA検出技術を使ったがん検査キットが対象とする癌
東芝のマイクロRNA検出技術は、たった1滴の血液から13種類のがんリスクを判定できるようです。
具体的ながん種別は以下の通りで、死亡率・罹患率が高い癌を幅広くカバーしているのではないでしょうか。
- 神経膠腫(こうしゅ)
- 食道がん
- 乳がん
- 肺がん
- 肝臓がん
- 担道がん
- 膵臓がん
- 胃がん
- 大腸がん
- 卵巣がん
- 前立腺がん
- 膀胱がん
- 肉腫
上記は国立がん研究センターも研究に携わっており、一定の信憑性が見込める情報といえます。
無論、現在確認されているすべての癌とはいきませんが、もし東芝の技術ががん検査キットとして実用化されれば、早期発見の確率を飛躍的に高められるでしょう。
ここではさらに、すい臓がんを除く死亡原因となりやすいがん種別の詳細を5つ確認していきます。
*ステージ0については生存率の測定材料が少ないケースもあるため、割愛しております。
肺がん
肺がんは男女合計で最も死亡率が高いがん種別であり、早期段階は比較的生存率が高いものの、ステージ3期からは30%未満まで落ち込みます。
ステージごとの5年生存率
- ステージ1期:84.1%
- ステージ2期:54.4%
- ステージ3期:29.9%
- ステージ4期:8.1%
主な症状
- 胸の痛み、息苦しさ
- 咳・痰
- 声のかすれ
- 転移による全身症状(骨の痛み、頭痛やめまい、食欲不振)など
なお、肺がんは喫煙と副流煙を避けることが予防につながり、アスベストの吸引しないようにするのも効果的です。
がん検査キットを用いて、5年生存率が高いステージ1の段階で見つけられるようにしましょう。
参考:肺がんの余命や生存率は?原因や予防についても解説|GENE CLINIC GROUP
,肺がんのステージ(病期)と生存率について|岡山済生会総合病院
大腸がん
大腸がんは、罹患数・死亡数ともにトップクラスのがん種別であり、末期まで進行すると「腸閉塞」や「腹膜播種」などの深刻な病を併発するリスクがあります。
ステージごとの5年生存率
- ステージ1期:92.3%
- ステージ2期:85.5%
- ステージ3期:75.5%
- ステージ4期:18.3%
主な症状
- 血便・黒色便
- 大腸の機能不全による食欲不振
- 腹部のしこり
- 貧血 など
大腸がんは、喫煙や飲酒、肥満などが発生原因になりやすく、加工肉などの過剰な摂取も注意が必要です。
また、血圧が高い場合も大腸がんのリスクが高まるので、こまめにチェックしておくと良いでしょう。
参考:大腸癌のステージ別症状とは?余命や検査方法について解説!|胃と大腸の内視鏡ナビ
胃がん
胃がんは胃の内側にある粘膜細胞が癌化したもので、少しずつ外側の壁に進行していきます。
末期になると大腸や膵臓、腹膜などにも転移しやすい特徴がありますが、早期段階における5年生存率は90%と高水準です。
ステージごとの5年生存率
- ステージ1期:90.7%
- ステージ2期:51.5%
- ステージ3期:21.5%
- ステージ4期:5.8%
主な症状
- みぞおちの痛み
- 腹部の不快感や胸やけ
- 食欲の低下や吐き気 など
なお、胃がんは塩分の過剰摂取やピロリ菌の持続的な接触、喫煙などが発生原因として挙げられます。
ステージ1の段階で治療を始められれば、十分に完治が見込める水準なので、がん検査キットを使って定期的にリスク判定すると良いでしょう。
参考:胃がんについて|ふくろう内科クリニック ,胃がんの生存率2018年|ハートライフ病院
肝臓がん
肝臓は体重の50分の1を占めるほどの大きな内臓であり、栄養の貯蔵や有害物質の解毒・分解、胆汁の合成といった役割を持っています。
ちなみに、肝臓がんはステージ3以降になると30%未満まで5年生存率が下がる一方、初期症状がほとんど発現しないため、がん検査キットによるこまめなリスク判定が特に重要といえるでしょう。
ステージごとの5年生存率
- ステージ1期:44.5%
- ステージ2期:44.7%
- ステージ3期:27.1%
- ステージ4期:計測不可
主な症状
- 肝不全による腹水やむくみ
- 破裂による出血 など
肝臓がんのステージ4期では、診断から5年間経過した事例がなく、生存率が公表されていません。
それほどに末期の治療は難易度が高まるので、可能な限り早期の発見を目指すようにしてください。
参考:肝臓がん|日本赤十字社医療センター ,肝癌の生存率2018年|ハートライフ病院
乳がん
女性がなりやすい癌として知られる乳がんは、初期症状がほとんど見られない一方、末期まで進行すると乳房切除などの事態に発展する可能性があります。
なお、男性も乳がんになる可能性はゼロではないため、低頻度でもがん検査キットで念のため調べておくのは無駄ではありません。
ステージごとの5年生存率
- ステージ1期:98.1%
- ステージ2期:83.3%
- ステージ3期:82.5%
- ステージ4期:33.8%
主な症状
- しこり
- 乳房の痛みや分泌液
- 乳糖の陥没 など
末期の5年生存率は比較的低いものの、ステージ1期〜3期までは80%を超えているため、定期的にがん検査キットを実施すれば、十分に完治が見込める段階で発見できるのではないでしょうか。
参考:乳がんとは|乳房再建ナビ ,乳癌の生存率 2018年|ハートライフ病院
記事のまとめ
東芝は2020年からマイクロRNA検出技術の実証実験をスタートしており、以下の通り高い検査精度をはじめとする様々な特徴を持っています。
- 2時間以内にリスクがわかる
- 99%の精度を誇る
- ステージ0から検知できる
ただ、2024年時点で製品化の情報は見受けられず、今後の見通しも定かではありません。
東芝のマイクロRNAを用いたがん検査キットを利用したい場合は、東芝の開発進捗をこまめにチェックしつつ、現在販売されている他の製品も視野に入れてみてください。
- ・本コンテンツの情報は、充分に注意を払い信頼性の高い情報源から取得したものですが、その正確性や完全性を保証するものではありません。
- ・本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としています。医療上のアドバイスや診断、治療に関しては、必ず医療従事者にご相談ください。
- ・本コンテンツの情報は、その情報またはリンク先の情報の正確性、有効性、安全性、合目的性等を補償したものではありません。
- ・本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。