健康経営のメリットとは?具体的な取り組み方を6つのステップで解説
企業の生産性や業務効率を向上させるうえで、昨今は「健康経営」という考え方が注目されるようになりました。
ただ、「健康経営とはそもそもどんな取り組みかわからない」「健康経営のメリットを知りたい」と悩む方も多いでしょう。
今回は健康経営の概要やメリット、導入への基本ステップを解説するので、ぜひ参考にしてください。
健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康管理を経営上の課題の一つとし、改善を目指すことで企業全体の生産性や業務効率を向上させる取り組みを指します。
これまで、健康管理は従業員が自主的に行うものとされてきました。
しかし、昨今は従業員の健康状態によって企業全体のパフォーマンスが大きく変化することがわかり、もはや健康管理は投資の一環として推進されているのです。
ちなみに、日本では経済産業省とNPO法人が主体となって推進しており、金融機関なども評価指標として取り入れ始めています。
政府による健康経営の2つの制度
次は、政府主体で取り組んでいる健康経営の制度を確認していきましょう。
- 健康経営優良法人
- 健康経営銘柄
それぞれ詳しく見ていきましょう。
健康経営優良法人認定制度
健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省が運営する公的取り組みの一つです。
健康経営優良法人に認定された場合、精度限定のロゴマークが使用できるようになり、以下のようなメリットが得られます。
- 企業の公式サイトやPR、求人票などに掲載できる
- 一部自治体では公共事業入札時の加点要素となる
- 金融機関などから優遇制度が受けられる など
なお、本制度は「大規模法人部門」「中小規模法人部門」の2つに分かれており、特に優秀な企業は「ホワイト500(大規模法人部門)」「ブライト500(中小規模法人部門)」の認定を受けることが可能です。
無論、健康経営優良法人の認定にはいくつかの要件をクリアする必要があるものの、企業は自社の健全性などをアピールできるため、取り組む価値は十分にあるのではないでしょうか。
健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件
今回は、中小規模法人部門における健康経営優良法人の認定要件を見ていきましょう。
認定要件 | 概要 | 要否 |
---|---|---|
1.経営理念(経営者の自覚) | 健康宣言の社内外への発信、経営者自身の健診 | 必須 |
2.組織体制 | 担当者の設置、(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データ提供 | 必須 |
3.制度・施策実行 | ①従業員の健康課題の把握と対策の検討、②健康経営の実践に向けた土台づくり、③従業員の心身の健康づくりに関する具体的な対策 | 各種項目によって要否が異なる |
4.評価・改善 | 健康経営の取り組みに対する評価・改善 | 必須 |
5.法令遵守・リスクマネジメント(自主申告) | 定期健診を実施し、50人以上の事業場においてストレスチェックを行うなど | 必須 |
上表はあくまで概要であり、具体的な要件はさらに細かく設定されています。
今後認定を検討している方は、経済産業省の公式サイトをチェックしてみてください。
健康経営銘柄
健康経営に関する制度としては、上場企業に向けた健康経営銘柄も挙げられるでしょう。
本制度は、健康経営に取り組む企業が将来的な業績アップや株価向上の期待があるとし、「健康経営銘柄」として一般投資家に紹介するものです。
経済産業省と東京証券取引所が企業を選定しており、認定された場合は投資家からの資金流入やブランディングといったメリットが得られます。
しかし、健康経営銘柄はそもそも上場企業しか対象にならず、一業種あたり一社しか認定が受けられない難関認定制度です。
目指す価値は十分にあるものの、まずは健康経営優良法人を目下のゴールとし、健康経営銘柄は将来的な目標として捉えておいた方が良いかもしれません。
健康経営のメリットとは
次は、健康経営に取り組むメリットについて解説します。
- 採用活動の促進
- 生産性の向上
- 企業のブランディング
- 離職率の低下
- 自治体や金融機関からの優遇
それぞれ詳しく見ていきましょう。
採用活動の促進
健康経営に取り組む企業は従業員にとっても働きやすく、満足度が高まる傾向にあります。
そして、求職者に対してもクリーンなイメージをPRできるため、採用活動の促進につながるでしょう。
健康経営優良法人の認定も受ければ、自社の魅力をより効率的に伝えられます。
生産性の向上
労働環境が整っていない企業では、従業員が疲労やメンタルヘルスの問題を抱え込みやすく、複数の欠勤が重なった際に生産性が大幅に低下する可能性があります。
一方、健康経営に取り組んでいれば、従業員は心身ともに健康状態が保たれ、生産性を維持・向上させながら事業を展開できるでしょう。
企業のブランディング
健康経営は、企業のブランディング・イメージアップにもつながるメリットがあります。
健康経営優良法人に認定された場合、運営側からプレスリリースなどで発表してくれるケースもあるため、コストを抑えながら自社をPRできるでしょう。
離職率の低下
健康経営は、新規採用促進だけでなく既存社員の離職率低下にもつながります。
中長期的に人材が定着すれば知識や経験を蓄積できるだけでなく、新しく雇用した社員にも効率的にノウハウを横展開していけるでしょう。
なお、人材が離職した場合、それまで当該社員に投じたコストに加え、新規採用における宣伝費なども発生します。
健康経営によって離職率を抑えられれば、そういった支出を避けられるメリットもあるのです。
自治体や金融機関からの優遇
健康経営の取り組みを通して健康経営優良法人などに認定されれば、自治体や金融機関から一定の優遇が受けられるケースもあります。
- 自治体の公式サイトなどでの掲載
- 融資金利の優遇
- 保険料の割引 など
ただし、上記は地域によって異なるため、詳細は自治体・金融機関に問い合わせてみてください。
導入への基本ステップを解説
ここからは、健康経営を導入する基本的なステップを解説します。
- 加入中の健康保険組合などにアドバイスを求める
- 社内外に健康宣言する
- 健康経営の体制を作る
- 自社の課題を洗い出す
- 計画を立てる
- 取り組みを実施・評価する
今後健康経営を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
1.加入中の健康保険組合などにアドバイスを求める
健康経営優良法人の認定を受けるには、健康保険組合や協会が運営する「健康宣言事業」に参加する必要があります。
そのため、最初のステップとして、現在加入している健康保険組合、あるいは協会けんぽなどに健康経営を始めたい旨を伝えましょう。
いずれの機関にも健康経営に関する専門知識を備えたスタッフが在籍しているので、効果的なアドバイスが得られます。
2.社内外に健康宣言する
ある程度方向性が把握できたら、自社のホームページに専用ページを作り、健康宣言を行いましょう。
健康宣言とは、経営者が主体となって従業員と家族の健康管理を経営課題として掲げ、全社的に対策していくことを明確に示す行為を指します。
この時、社内向けにも明文化して宣言するようにしてください。
3.健康経営の体制を作る
健康経営優良法人では、健康づくり担当者の任命が必須要件とされています。
幹部社員や健診などに関わる人物を一人選任し、事業規模が大きい場合は実際に現場で指揮するメンバーも複数名選びましょう。
4.自社の課題を洗い出す
組織体制が構築できたら、自社が抱える健康課題を洗い出していきます。
- 喫煙率の調査
- 食生活・運動習慣のチェック
- ストレスチェック
- 健診の受診率チェック など
重要度の高い項目がわからない場合は、健康保険組合などに問い合わせてみるのもおすすめです。
担当者を主体に企業全体で調査を進めてみてください。
5.計画を立てる
健康経営優良法人などの認定要件と課題をベースに、今後実施していく計画を立てていきましょう。
具体的には以下が挙げられます。
- 健診の受診率向上
- ワークライフバランスの整備
- 社内交流の活発化
- 長時間労働防止の対策
- 感染症対策 など
また、昨今はがん検査キットの導入も健康経営優良法人の認定要件に組み込まれています。
法人向けに安価なプランを提供している製品もあるため、気になる方は以下の記事をチェックしてみてください。
6.取り組みを実施・評価する
計画を実行に移し、一定期間ごとに成果を評価していきましょう。
社内に健康管理意識が浸透するまでは達成度が伸び悩むケースもありますが、じっくり検証を繰り返し、施策をアップデートするのがおすすめです。
そして、施策の成果に応じて健康経営優良法人の申請なども検討してみてください。
記事のまとめ
健康経営は、従業員の健康管理を通して企業の生産性向上などを目指す取り組みであり、経済産業省を始めとする複数の機関が推進しています。
健康経営優良法人には一定の要件が設けられているものの、認定を受けることで、ブランディングや採用活動の促進につながるでしょう。
本記事で触れた基本のステップを参考に、健康経営をスタートしてみてください。
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