ブライト500の認定基準と取得方法、健康経営実践ステップを紹介
企業の成長を支える隠れた基盤、それが従業員の健康です。
しかし、大企業と比べてリソースの限られる中小企業にとって、健康経営の実践は容易ではありません。
本当に効果はあるのか、どこから手をつければいいのか。
そんな疑問を抱える経営者も多いでしょう。
ブライト500は、そんな中小企業の健康経営への第一歩を後押しする制度として注目を集めています。
この記事では、認定取得のメリットから具体的な取り組み方まで、実践的な視点で解説していきます。
健康経営優良法人認定制度の「ブライト500」とは
ブライト500は、健康経営優良法人認定制度における中小規模法人部門の最高ランクです。
経済産業省と日本健康会議が主導するこの制度は、従業員の健康管理を経営的視点で戦略的に実践する中小企業を評価し、認定するものです。
健康経営度調査の結果に基づいて、中小規模法人部門で健康経営優良法人として認定された企業のうち、特に優れた上位500社がブライト500として選出されます。
このブライト500認定の目的は、中小企業の健康経営への取り組みを促進し、社会的評価を高めることです。
対象となる法人の規模
経済産業省の公式資料によると、ブライト500の対象となる法人は、中小企業基本法における中小企業者です。
具体的には、以下の条件を満たす企業が中小規模法人として分類されます。
業種 | 従業員数 | 資本金または出資金額 |
---|---|---|
卸売業 | 1人以上100人以下 | 1億円以下 |
小売業 | 1人以上50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 1人以上100人以下 | 5,000万円以下 |
製造業その他 | 1人以上300人以下 | 3億円以下 |
この条件のいずれかを満たす企業が、ブライト500の対象となる中小規模法人となります。
ブライト500は、大企業とは異なる経営資源や課題を持つ中小企業に特化した認定制度として設計されているのです。
ブライト500とホワイト500の違い
ブライト500とホワイト500は、同じ健康経営優良法人認定制度の一部ですが、対象となる企業規模と評価基準に違いがあります。
比較項目 | ブライト500 | ホワイト500 |
---|---|---|
対象企業規模 | 中小規模法人 | 大規模法人 |
認定数 | 中小規模法人部門の上位500社 | 大規模法人部門の上位500社 |
評価基準 | 中小企業の実情に合わせた基準(例:地域への健康経営の普及活動を重視) | 大企業向けのより厳格な基準(例:グループ全体での取り組みを評価) |
申請プロセス | 中小企業向けの簡略化された申請手続き | より詳細な資料提出が必要 |
ブライト500は中小企業の健康経営を促進し、ホワイト500は大企業の取り組みを評価するという、それぞれの役割の違いがあります。
なお、ブライト500の申請の流れについてはのちほど詳しく解説しますので、ブライト500認定取得を目指す中小企業の経営者様や役員様はぜひ最後まで読んでみてくださいね。
ブライト500の認定要件
健康経営優良法人認定制度の中小規模法人部門において、特に優れた取り組みを行っている企業がブライト500の認定を受けることができます。
ブライト500の認定基準には5つの大きな項目があり、それぞれの項目で定められた基準を満たさなければなりません。
中小企業が健康経営に取り組む際は、これらの要件をしっかりと理解し実践することがブライト500認定の取得につながりますので、ぜひ参考にしてくださいね!
経営理念(経営者の自覚)
ブライト500認定の最初のステップは、経営者自身が健康経営の重要性を理解し、積極的に推進することです。
具体的には、次の点が求められます。
- 健康宣言の社内外への発信
- 経営者自身の定期的な健康診断受診
- 健康経営を経営課題として位置付けた経営計画の策定
経営者が率先して健康経営に取り組む姿勢を見せることで、従業員全体の意識も高まります。
この項目では、経営者が健康経営にどれだけ本気で取り組むかが問われます。
単なる掛け声ではなく、具体的な行動と計画が必要です。
経営者自身が健康診断を受け、その結果をもとに自身の健康改善に取り組むことで、従業員に強いメッセージを送ることができます。
また、健康経営を経営戦略の一つとして位置づけることで、会社全体での取り組みを進めることができるでしょう。
組織体制
健康経営を効果的に進めるには、適切な組織体制を作ることが欠かせません。
ブライト500では次の点が評価されます。
- 健康づくり担当者の設置
- 産業医や保健師との連携体制の整備
- 健康保険組合等との協働による取り組みの実施
中小企業の規模に合わせた柔軟な体制づくりが求められますが、従業員の健康管理を組織的に行う仕組みを整えることが大切です。
組織体制を整えることは、健康経営を続けていくための土台となります。
健康づくり担当者の役割と責任を明確にすることが重要です。
また、産業医や保健師と連携を深めることで、専門家の知識を活かした効果的な健康管理ができるようになるでしょう。
さらに、健康保険組合などと協力することで、より幅広い健康増進プログラムを実施することが可能です。
制度・施策実行
健康経営の具体的な取り組みとして、次のような施策を実施することが求められます。
- 定期健康診断の受診率向上
- メンタルヘルス対策の実施
- 受動喫煙対策の徹底
- 運動機会の増進や食生活改善の取り組み
ブライト500認定を目指す企業は、このような施策を計画的に実行し、従業員の健康増進に努める必要があります。
制度・施策実行では、健康経営の考え方を具体的な行動に移すことが求められます。
定期健康診断の受診率を上げることは、従業員の健康状態を把握するための基本です。
メンタルヘルス対策は、今のビジネス環境では特に重要性が増しています。
また、受動喫煙対策や運動・食生活の改善への取り組みは、従業員の生活習慣病を防ぐ直接的な効果があります。
これらの施策を総合的に実施することで、従業員の健康リスクを減らし、生産性を高めましょう。
評価・改善
健康経営の取り組みを継続的に改善していきましょう。
- 健康経営の取り組みに対する効果検証
- 検証結果に基づく施策の見直しと改善
- 健康経営度調査などを活用した自社の取り組み状況の把握
PDCAサイクルを回すことで、より効果的な健康経営を実践できます。
評価・改善のプロセスは、健康経営の取り組みを継続的に発展させるために欠かせません。
効果の検証を通じて、どの施策が効果的だったか、どこに課題が残っているかを明らかにすることができます。
また、健康経営度調査を活用することで、自社の取り組みを客観的に評価し、他社と比較することもできます。
これらの情報をもとに、次年度の計画を立て、より効果的な健康経営を実践していくことが重要です。
法令遵守・リスクマネジメント
健康経営を進める上で、法令遵守は最も基本的な要件です。
ブライト500では次の点が要件となります。
- 労働安全衛生法に基づく定期健康診断の実施
- 50人以上の事業場におけるストレスチェックの実施
- 従業員の健康管理に関連する法令の重大な違反がないこと
これらの要件を満たすことで、健全な健康経営の基盤を築くことができます。
法令遵守とリスクマネジメントは、健康経営の土台となる重要な要素。
労働安全衛生法に基づく定期健康診断やストレスチェックの実施は、従業員の健康状態を把握し、必要な対策を講じるための基本的な取り組みです。
また、関連する法令を守ることは、企業の社会的責任を果たす上でも重要ですよね。
従業員が安心して働ける環境を整え、健康経営の効果を最大限に高めましょう。
参考:「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書」
健康経営優良法人認定のメリット
健康経営優良法人、とりわけブライト500の認定を取得することで、企業は様々な恩恵を受けることができます。
そのメリットは従業員の健康増進から企業業績の向上まで、幅広い範囲に及ぶものです。
健康経営への取り組みは、従業員の健康を守るだけでなく、企業の持続的な成長と発展にも大きく寄与します。
ブライト500認定取得の主なメリットは以下の通りです。
従業員の健康維持・向上
ブライト500の認定取得を目指す過程で、企業は従業員の健康維持・向上に積極的に取り組むようになります。
定期健康診断の受診率を高めたり、メンタルヘルス対策を実施したり、運動を促進するプログラムを導入したり。
その結果、従業員の心身の健康が改善され、病気やけがによる欠勤が減ります。
また、従業員自身の健康への意識も高まり、自主的な健康管理にもつながるでしょう。
企業イメージの向上
ブライト500を含む健康経営優良法人の認定を受けると、企業のイメージが大きく向上します。
ブライト500認定が、従業員の健康に配慮し、健康経営に積極的に取り組んでいる企業であることを社会に示す証になるからです。
認定企業は経済産業省のウェブサイトで公表され、専用のロゴマークを使用できるようになります。
これにより、取引先や顧客、投資家からの信頼が高まり、企業ブランドの価値が向上します。
また、ESG投資の観点からも評価され、投資家からより注目されるようになる可能性があるでしょう。
人材採用・定着率の向上
健康経営優良法人、特にブライト500の認定は、人材の採用と定着に大きな効果をもたらします。
最近では、就活生や転職を考える人々の間で、企業の健康経営への取り組みが重要な選考基準の一つになっているのです。
ブライト500認定企業は、従業員の健康を大切にする企業として認知され、優秀な人材を集めやすくなるでしょう。
また、すでに働いている従業員にとっても、自社が健康経営に力を入れていることは大きな魅力となり、仕事へのやりがいや会社への帰属意識が高まります。
その結果、離職率が下がり、長期的な人材の確保につながります。
生産性の向上
健康経営優良法人認定、特にブライト500の取得を目指して実施される様々な健康施策は、従業員の生産性向上につながります。
健康な従業員は体力面でも精神面でも余裕があるため、より効率的に仕事に取り組むことができるでしょう。
また、病気による欠勤や休職が減ることで、業務の中断が少なくなり、組織全体の生産性が上がります。
さらに、健康経営の取り組みによってワーク・ライフ・バランスが改善されることで、従業員のやる気が高まり、創造性や問題解決能力も向上するはずです。
これらの要因が組み合わさって、企業全体の業績向上につながっていくのです。
ブライト500の申請方法
先述した通り、ブライト500は、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定企業のうち、特に優れた取り組みを行う上位500社に与えられる称号です。
申請は健康経営優良法人の認定申請と同時に行います。
申請の具体的な手順は以下の通りです。
1. 事前準備
- 加入している保険者(協会けんぽや健康保険組合など)の健康宣言事業への参加が必須条件です
- 「ACTION!健康経営」ポータルサイト(https://kenko-keiei.jp/)にアクセスし、新規ID発行サイトで法人情報を登録
- 登録したメールアドレスに専用サイトのURL、ID、パスワードが届きます
2. 申請書の作成
- 専用サイトから健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書をダウンロード
- 申請書に必要事項を記入(ブライト500申請の場合、Q30~Q35の回答が必須)
- 「制度・施策実行」の①~⑮のうち13項目以上を満たすことを確認
- エビデンス資料を準備(審査時の確認用)
3. 申請手続き
- 記入済みの申請書を専用サイトにアップロード(例年8月中旬~10月中旬)
- 認定申請料16,500円(税込)の支払い
- 審査結果は翌年3月頃に通知
ブライト500の認定を目指す企業は、単に認定基準を満たすだけでなく、他社と比較して優れた取り組みを実施していることが求められます。
また、2025年度からは評価結果を企業のホームページで開示することが新たな要件となりました。
申請にあたっては、自社の健康経営の取り組みを申請書で適切にアピールすることが認定取得のカギといえるでしょう。
ブライト500認定企業の取り組み事例
ここでは、ブライト500に認定された企業の具体的な取り組みをご紹介します。
中小企業の経営者や人事担当者の皆様にとって、健康経営の実践的なヒントとなるはずです。
大手企業と異なり、限られた経営資源の中で効果的な施策を展開するには、他社の成功事例を参考にすることをおすすめします。
以下では、独自の健康プログラムやデジタルツールの活用、きめ細やかなサポートなど、特徴的な取り組みを行う3社の事例をご紹介していきます。
株式会社タニタ
タニタは2024年、8年連続で「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に認定され、「ブライト500」にも選出されました。
同社が展開する健康経営の核となっているのが、通信機能を備えた活動量計や体組成計を活用した「タニタ健康プログラム」です。
全従業員に活動量計を配布して日々の歩数を計測するほか、社内に設置した体組成計で体重や体脂肪率、筋肉量などの変化を定期的にモニタリングできる体制を整えています。
さらに、従業員同士の歩数を競う「歩数イベント」の開催や、始業時のラジオ体操とタニタ独自のエクササイズ「タニタ体操」の実施など、楽しみながら健康づくりに取り組める工夫を取り入れ、従業員の健康増進を後押ししています。
株式会社ANA総合研究所
ANA総合研究所は2024年、初めて「健康経営優良法人(ブライト500)」に認定されました。
ANAグループ全体の健康経営方針を基盤に、従業員のウェルビーイング向上を目指した独自の取り組みを展開していることが、同社の健康経営における特色です。
「MY HEALTH WEB」というアプリを導入し、従業員が自身の健康状態を把握・改善できるような支援を行っているほか、年2回開催される「歩Fes(あるフェス)」というウォーキングイベントへの参加を促し、運動習慣の定着を図っています。
心の健康面でも充実したケアを提供しており、ストレスチェックの実施や、臨床心理士による相談窓口の設置など、従業員の心身両面の健康を支える体制を構築しています。
このような総合的な取り組みを通じて、従業員の健康意識向上と働きがいの醸成につなげています。
参考:ANAホールディングス公式サイト「「健康経営優良法人2024~ブライト500~」にANAグループで初めて認定されました」
日新火災インシュアランスサービス株式会社
日新火災インシュアランスサービスは2024年、3年連続で「健康経営優良法人(ブライト500)」に認定されました。
従業員とその家族の健康を守るための多角的なアプローチが、同社の健康経営における強みとなっています。
インフルエンザ予防接種の費用補助や就業時間内完全禁煙の実施、禁煙外来受診への費用補助などを通じて、疾病予防に注力しています。
また、食生活の改善を促すため、関連パンフレットの配布や健康飲料の提供を実施。
2023年度には、健康診断の結果を踏まえてBPI数値の改善に効果のある飲料を配布するなど、きめ細やかなサポートを展開しています。
運動促進や食生活改善に関する情報を定期的にニュースとして発信し、健康への意識を高める取り組みも積極的に行っています。
参考:日新火災インシュアランスサービス株式会社公式サイト「健康経営の取り組み」
記事のまとめ
健康経営は大企業だけのものではありません。
従業員の健康を守りながら企業の成長を実現する―このチャレンジに、多くの中小企業が挑戦を始めています。
ブライト500の認定取得は、その道筋を示す羅針盤となるでしょう。
認定要件の達成に向けた取り組みは、単なる制度対応ではなく、企業の持続的な発展につながる投資です。
まずは自社の現状を見つめ直し、できることから始めてみませんか。
従業員と共に歩む健康経営への第一歩が、企業の未来を変えるきっかけとなるはずです。
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