ウェルビーイング
中小企業がウェルビーイング経営を成功させる方法とは?効果と事例4選も紹介
ウェルビーイング経営とは?中小企業で成功させるポイントや効果、事例4選
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従業員の幸福が企業の力に変わる、中小企業のためのウェルビーイング導入ガイド

「ウェルビーイング経営」という言葉を耳にする機会が増えています。

従業員の心身の健康と幸福感を重視し、働きやすい環境を整えることで企業全体のパフォーマンスを高めるウェルビーイング経営は、人材確保が課題となる中小企業にぜひ着手していただきたい経営手法のひとつです。

健康経営の枠を超え、従業員満足度の向上から生産性アップまで幅広い効果をもたらします。

この記事では、中小企業がウェルビーイング経営を成功させるポイントや具体的な効果、実践企業の事例を解説します。

ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイング経営とは、従業員の心身の健康や幸福感を重視し、働きやすい環境を整えることで、企業全体のパフォーマンスを向上させる経営手法です。

中小企業では、限られたリソースを最大限に活用するために、従業員一人ひとりの満足度や生産性を高めることが重要となります。

ウェルビーイング経営は、単なる健康管理を超え、企業文化や働き方改革を通じて、持続可能な成長を目指すアプローチとして注目されています。

「ウェルビーイング」の基本概念

そもそも「ウェルビーイング」とは、単なる健康状態の維持ではなく、身体的・精神的な健康や幸福感、そして社会的なつながりが調和した状態のことです。

現代の経営においては、従業員が「働く意味」や「やりがい」を感じられる環境づくりが求められています。

中小企業においても、この考え方を取り入れることで、従業員のモチベーション向上や離職率低下といった成果を得ることができるのです。

ウェルビーイング経営と健康経営の違い

ウェルビーイング経営の考え方を深める上で、混同されやすい「健康経営」との違いを明確にしましょう。

健康経営が「身体的健康の維持」に焦点を当てるのに対し、ウェルビーイング経営は「従業員の総合的な幸福創造」を目指し、個人の人生の質全体をカバーします。

ウェルビーイング経営と健康経営の具体的な違いは以下の通りです。

比較項目 健康経営 ウェルビーイング経営
定義 従業員の健康維持を経営課題と捉える施策 従業員の総合的幸福感を経営資源と位置づける施策
主な目的 医療費削減や労働災害防止など「リスク管理」 イノベーション創出や組織活性化など「成長戦略」
対象範囲 身体的健康・メンタルヘルス 身体的/精神的健康+人間関係/キャリア満足度/自己実現
時間軸 短期的成果(1〜3年) 中長期的成果(3〜5年以上)
施策例 ・定期健康診断
・ストレスチェック
・フレックスタイム制度
・キャリア研修
評価指標 ・疾病率
・医療費推移
・離職率
・従業員満足度調査結果
投資対効果 1:2.3(医療費削減効果) 1:4.1(生産性向上効果)
社会的評価 健康経営優良法人認定 SDGs達成度やESGスコア向上

中小企業では、健康経営を「土台」としつつ、ウェルビーイング経営で「競争優位性」を築くアプローチが効果的でしょう。

ウェルビーイングの5つの要素「PERMA」

ウェルビーイングの5つの要素「PERMA」

マーティン・セリグマン博士が提唱したPERMAモデルは、持続的な幸福感(ウェルビーイング)を構成する5つの要素を体系化した理論です。

ポジティブ心理学の基盤となるこのモデルは、次の5つの独立した要素で構成されています。

1. Positive Emotion(ポジティブ感情)

喜び・感謝・愛など前向きな感情を指し、ストレス耐性を高め思考の柔軟性を促進します。

日常の小さな喜びを意識的に経験し、ポジティブ感情を「蓄積」することが重要です。

2. Engagement(没頭・エンゲージメント)

時間を忘れて没頭する「フロー状態」を意味し、仕事や趣味での集中力向上・生産性向上につながります。

強みを活かした活動がこの状態を生み出します。

3. Relationships(人間関係)

信頼できる他者とのつながりが幸福感に直結することを示しています。

ハーバード大学の研究でも「支え合う関係」の重要性が実証されています。

中小企業においては、チーム協力やメンター制度などを取り入れることが効果的でしょう。

4. Meaning(人生の意味)

自分が属する社会や組織への貢献意識を指します。

長期的な視点で「なぜ生きるか」を問い直すことが核心となります。

企業ではビジョン共有を通じて、従業員の存在意義を明確化することが重要です。

5. Accomplishment(達成)

目標達成による自己効力感を高めることができます。

短期的な成果だけでなく「成長プロセス」自体に価値を見いだすことが大切です。

適切な目標設定と進捗管理が成功の鍵となります。

中小企業が実践しやすいPERMAモデル

中小企業が実践しやすいPERMAモデル

PERMAモデルは、ウェルビーイング(個人の幸福感)を多角的に分析し、持続的な成長を促すフレームワークとして、教育・ビジネス・カウンセリングなど幅広く応用されています。

中小企業におけるPERMAモデル応用の具体例は以下のとおりです。

要素 職場での具体例
Positive Emotion
(ポジティブ感情)
  • 感謝カードの導入
  • 褒める文化の醸成
  • 朝礼など「成功体験シェア」時間の導入
Engagement
(没頭)
  • 強みを活かした業務配分
  • 適性検査を活用した部署異動制度
Relationships
(人間関係)
  • 社内コミュニティの活性化
  • 部門横断ランチミーティング
Meaning
(人生の意味)
  • CSR活動への参加機会提供
  • SDGs関連プロジェクトへの参加機会提供
Accomplishment
(達成)
  • 段階的な目標設定制度
  • 資格取得支援制度

中小企業におけるウェルビーイング経営の3つのメリット

中小企業におけるウェルビーイング経営の3つのメリット

中小企業がウェルビーイング経営を導入する最大の強みは、少人数だからこそ変化の効果を実感しやすい点にあります。

従業員数が少ない分、一人ひとりの変化が組織全体に波及しやすく、大企業では難しい「全員参加型」の取り組みが可能です。

特に「生産性」「人材確保」「企業価値」の3分野で顕著な効果が現れます。

生産性が向上する

ウェルビーイング経営が生産性を上げるメカニズムは科学的に立証されています。

ポジティブ心理学の研究では、幸福感が高い従業員は創造性が37%高く、問題解決速度が20%速いことが判明しています。

中小製造業のを例として挙げると、作業場の照明改善と週1回のチームミーティングを組み合わせることで、不良品率が減少するといった効果が期待できます。

離職率は低下し、採用競争力は向上する

人材不足に悩む中小企業にとって最大のメリットが人材定着効果です。

従業員の心身の健康や職場環境を改善することで、働きやすさが向上し、職場への愛着が生まれます。

その結果、離職率が低下し、安定した人材確保が可能となります。

また、ウェルビーイング施策を通じて企業の魅力が高まり、求職者にとって魅力的な職場として認識されることで、優秀な人材の採用が容易になります。

SDGsやESG投資の観点での企業価値が向上する

近年、投資家が注目するESG指標において、従業員満足度は重要な評価基準となっています。

持続可能性を重視した経営は、環境や社会への貢献を通じて企業ブランドの信頼性を高め、投資家や顧客からの評価を得やすくなります。

ESG投資家は、長期的な成長が期待できる企業を重視するため、中小企業でもESG経営への取り組みが資金調達の円滑化や市場競争力の向上につながるケースが増えています。

中小企業でウェルビーイング経営を成功させるポイント

中小企業でウェルビーイング経営を成功させるポイント

中小企業がウェルビーイング経営を成功させるためには、企業全体の文化や働き方を再考することが重要です。

限られたリソースを活用する中小企業では、従業員一人ひとりの変化が企業全体に大きな影響を与えます。

ここでは、中小企業でウェルビーイング経営を成功させるための具体的なポイントを紹介します。

まずは経営層の意識改革が必須

ウェルビーイング経営は経営層が率先して取り組むことが重要です。

経営層が自ら実践し、従業員にその意義を伝えることで、企業全体に浸透しやすくなります。

例えば、経営者が自ら「週1回のオープンコミュニケーション」を開始することで、従業員の意見を積極的に取り入れる文化が育まれます。

また、ウェルビーイング経営は短期的な成果だけでなく、長期的な視点で企業の成長や持続可能性を考える必要があります。

経営層が「5年後のビジョン」を明確にし、従業員全員がその目標に向かって一体となって取り組む姿勢を促すなどの施策が効果的でしょう。

労働環境と働き方の見直し

フレックスタイム制やリモートワーク制度を導入することで、従業員のライフスタイルに合わせた働き方が可能になり、仕事とプライベートのバランスが取れるようになります。

併せて職場環境を改善することで、従業員がリラックスして働ける環境を提供することも大切です。

例えば、自然光を取り入れたオフィスデザインや、騒音対策などが挙げられます。

これにより、従業員の集中力や創造性の向上が期待できます。

従業員とのコミュニケーション活性化

働き方改革によって、社内のコミュニケーションが希薄になるのではないか、と心配な方もいるでしょう。

社内SNSやチャットツールを活用することで、従業員同士のコミュニケーションが活発になり、情報共有や意見交換がスムーズになります。

また、定期的なフィードバックや意見交換の場を設けることで、従業員の声を聞き、改善策を検討することができます。

例えば、従業員のモチベーションを向上するための策として、月1回の「オープンフィードバック会議」で従業員の意見を集め、実際に業務改善に反映する取り組みなどが有効です。

中小企業における成功事例4選

中小企業における成功事例4選

中小企業がウェルビーイング経営を実践する際の具体的な成果を、4社の事例から紹介します。

今回紹介する保健同人フロンティア、高木建設、アロー、マツ六の4社は、従来の健康診断やストレスチェックに留まらず、データドリブンなアプローチや現場の声を活かした改善策、そしてトップマネジメント自らが推進する姿勢を通して、従業員の幸福と企業成長の両立を実現しています。

以下では、各社の取り組み内容や具体的な成果、転換へのプロセスを詳しく解説し、また外部専門家の評価や実際の企業現場での声も交えながら、その全体像を明らかにします。

いずれも従業員の幸福と企業成長を見事に両立させた好事例で、特に「健康経営」から一歩進んだ「ウェルビーイング経営」への転換ポイントが明確です。

ぜひ御社でのウェルビーイング経営実施の参考にしてくださいね。

株式会社保健同人フロンティア

保健同人フロンティアは、ウェルビーイング経営を企業理念の根幹に位置づけ、「生きがいや働きがいを感じながら、人や社会とよい関係を築ける状態」を目指しています。

同社の公式サイト 保健同人フロンティア公式サイト2 では、「職場・社会・個人の Well-being 向上」をミッションとして掲げ、科学的エビデンスに基づく健康増進サービスや HoPE(Health & Productivity Evaluation)サーベイを通じたストレスチェックが実施されています。

主な取り組みは以下の通りです。

HoPEサービスとデジタル施策

HoPE サーベイは、健康経営のデータ管理システムとして、従業員のストレスレベル改善に成功。

導入後にはGHQ28スコアが平均2.1ポイント改善し、EAP(Employee Assistance Program)の利用件数が1年で3.5倍に増加したとの報告もあります。

テレワーク制度の効果

パンデミックを契機に在宅勤務制度の導入が始まり、事務職の業務効率が15%向上、会議時間が平均38分→25分に短縮されたという定量的成果も得られています。

認定実績

健康経営優良法人(ホワイト500)として、2023年および2024年に認定を重ね、健康診断受診率100%、ストレスチェック100%を継続するなど、認定基準の達成状況も高く評価されています。

また、経営者の段塚忠宏社長は「健康経営こそ企業の競争力の源泉」として、データと現場のフィードバックをもとに、積極的にウェルビーイング経営を推進しています。

参考

高木建設株式会社

高木建設は、建設現場という特性に合わせた独自のストレスチェック制度や福利厚生が特徴です。

業界特化のストレスチェック

建設現場の高温・高所作業のリスクを反映した独自の質問票を採用。

年1回実施に加え、随時相談窓口の整備により、現場でのストレス改善策(例:遮熱塗装ヘルメットや移動式休憩ボックスなど)の実施に繋がっています。

実績として、改善チームが組織され、ストレス低減率8.2%達成に近づきました。

安全衛生功労者表彰

労働安全衛生の向上と具体的な作業環境改善策が評価され、2023年には厚生労働大臣表彰を受賞。

実際、遮熱ヘルメットの採用などが受賞理由として挙げられています。

現場からのフィードバックと実践

高木建設では、現場監督が中心となったストレス改善チーム活動が実施され、定期的なメンタルヘルス研修を通じて、現場従業員の健康意識が向上。

後続対策として重機運搬のためのデジタルスケジューリングシステムなども導入され、現場改革が継続的に進められています。

参考

株式会社アロー

株式会社アローは、健康経営優良法人としての認定を受け、ウェルビーイングリーダー制度や匿名意見箱「ARROW VOICE」など、組織全体で従業員の幸福度向上に寄与する施策を展開しています。

ウェルビーイングリーダー制度の導入

2021年からウェルビーイングリーダーを任命し、部署別に従業員の健康・働きがいを評価する体制を整備。

これにより、経営層と現場との連携が強化され、生産性指標も改善しました。

ARROW VOICEによる意見収集

匿名性を保ちながら従業員からの意見やフィードバックを即時に改善策へ反映させる仕組みを導入し、結果としてフィードバック提供率が3倍増加するなど、コミュニケーションの活性化に成功しています。

若手育成プログラムと生産性向上

OJT制度やメンター制度による若手育成が行われ、技術習得期間を40%短縮。

さらに、成果連動報奨制度により、生産性指標上位20%の社員に特別手当が支給されるなど、効果が定量的に示されています。

参考

マツ六株式会社

マツ六株式会社は、創業100年を超える企業として、早くから”人”の大切さを認識し、トップのリーダーシップで健康経営を推進しています。

2019年に健康宣言を行い、2020年から5年連続で健康経営優良法人の認定を受けており、”ウェルビーイング”を追求する姿勢が特徴です。

健康管理活動と組織体制

2010年の本社インフルエンザ集団予防接種開始から、2022年の年間休日120日への増加、健康優良賞創設など健康施策を段階的に拡充してきました。

各事業所には「健康づくり担当者」を配置し、健康診断受診率とストレスチェック受検率100%を目標に掲げています。

取り組みの成果

健康診断受診率は2022年に100%を達成し、ストレスチェック受診率も2024年には99.1%に到達。

社員定着率は2023年に97.7%、生産性も2023年には前年比104.1%と着実に向上しています。

特徴的な施策

定期健診結果がすべて「A」の社員を「健康優良賞」として表彰する制度を導入しています。

デスクワークの負担解消のためノートパソコンスタンドを全員に支給し、77.5%の社員が「負担が解消された」と評価しました。

健康保険組合と連携したコラボヘルスにより、健康アプリやウォーキングプログラムを通じて運動習慣の定着を図っています。

参考

記事のまとめ

記事のまとめ

中小企業こそウェルビーイング経営の恩恵を受けられることを、ぜひ覚えておいてください。

健康促進と従業員満足度の向上は、生産性向上に直結するだけでなく、SDGsへの貢献という社会的価値も生み出します。

コスト効率を考慮しながらも、「人」を中心に据えた経営は最新のトレンドではなく、持続可能性を高める必須の経営戦略です。

明日から始められる小さな一歩が、貴社と従業員の未来を変える可能性を秘めています。

ぜひこの記事を参考に、ウェルビーイング経営への第一歩を踏み出してみませんか。

参考文献

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