経営者必見!健康経営で目指すホワイト500の取得方法と7社の成功事例
企業の成長戦略として注目を集める「健康経営」。
その取り組みを評価する制度の最高峰が「ホワイト500」です。
経済産業省と日本健康会議が主導するこの認定制度は、従業員の健康管理を経営的視点で実践する企業の登竜門となっています。
人材確保や企業価値向上に悩む経営者、人事責任者の方々にとって、ホワイト500は具体的な指針となるでしょう。
この記事では、認定要件から申請手順、先進企業の事例まで、ホワイト500の全容を徹底解説します。
ホワイト500は健康経営優良法人認定制度の頂点
「ホワイト500」とは、健康経営優良法人認定制度における最高峰の称号です。
経済産業省と日本健康会議が共同で実施するこの制度は、従業員の健康管理を経営的視点で戦略的に実践する企業を評価し、認定するもの。
健康経営度調査の結果に基づいて認定が行われます。
大規模法人部門で健康経営優良法人として認定された企業のうち、特に優れた上位500社がホワイト500として選出される仕組みです。
健康経営優良法人認定制度の概要
そもそも健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が設計し、日本健康会議が運営する顕彰制度です。
経済産業省によると、この制度の目的は以下の通り。
優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。
引用元:健康経営(METI/経済産業省)
つまり、企業の健康経営への取り組みを評価・公表することで、従業員の健康管理を重視する企業が社会から正当に評価され、選ばれる仕組みを作ることが目的です。
認定部門
上記でも軽く触れましたが、認定は大きく以下の2つに分かれています。
- 大規模法人部門(ホワイト500を含む)
- 中小規模法人部門(ブライト500を含む)
2024年度の認定では、大規模法人部門で2,988法人、中小規模法人部門で16,733法人が認定されました。
健康経営への取り組みは年々広がっており、中でもホワイト500は、そうした健康経営の取り組みにおいて最も優れた企業群として位置づけられているのです。
そのため、ホワイト500認定企業は、健康経営のリーディングカンパニーとしての役割も期待されています。
引用元:「健康経営優良法人2024」認定法人が決定しました! (METI/経済産業省)
ホワイト500の認定要件
ホワイト500の認定要件は、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定要件を基本としつつ、より高い基準が設けられています。
主な認定要件は以下の5つの大項目で構成されています。
大項目 | 要件 |
---|---|
1. 経営理念(経営者の自覚) | ・健康経営の戦略を社内外に発信していること ・トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること |
2. 組織体制 | ・役員以上の役職者が健康づくりの責任者を担っていること ・産業医や保健師の関与、健康保険組合など保険者との協議・連携が行われていること |
3. 制度・施策実行 | ・全17項目の評価項目のうち、15項目以上を満たすこと ・従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討 |
4. 評価・改善 | 健康経営の推進に関する効果検証を行っていること |
5. 法令遵守・リスクマネジメント | ・定期健診を実施していること ・50人以上の事業場においてストレスチェックを実施していること ・労働基準法または労働安全衛生法に係る違反により送検されていないこと |
ホワイト500の認定を受けるためには、上記の「1. 経営理念」「2. 組織体制」「4. 評価・改善」「5. 法令遵守・リスクマネジメント」の4項目が必須要件となっています。
さらに、「3. 制度・施策実行」については、2つの必須項目に加えて13項目以上の要件を満たす必要があります。
また、2025年度の認定からは、「取締役会・経営会議等で健康経営を議題として取り上げていること」がホワイト500の必須条件として追加されました。
ホワイト500の認定を受けるためには、まず健康経営度調査に回答し、その結果が全回答法人の上位50%に入る必要があります。
その後、申請書類の提出や審査を経て、最終的に上位500法人がホワイト500として認定されます。
これらの厳しい基準を満たすことで、ホワイト500は従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として社会的な評価を受けることができるのです。
ホワイト500認定のメリット
企業の健康経営への取り組みを評価するホワイト500認定。
大規模法人部門のトップ500社に与えられるこの認定は、人材獲得や企業価値向上など、多岐にわたるメリットをもたらします。
以下では、ホワイト500認定を取得することのメリットを3つご紹介します。
従業員の健康増進と生産性向上
ホワイト500認定を目指す過程で、企業は従業員の健康管理に積極的に取り組むことになります。
具体的には、以下のようなさまざまな健康経営施策が実施されます。
- 定期健康診断の受診率向上
- メンタルヘルス対策
- ワーク・ライフ・バランスの推進 など
このような取り組みの結果、従業員の健康状態が改善され、病気による欠勤や離職が減少することが期待できます。
また、健康な従業員はモチベーションが高く、パフォーマンスも向上するため、結果として企業全体の生産性向上につながります。
企業ブランド力と人材採用への好影響
ホワイト500認定は、企業の社会的評価を大きく向上させます。
というのも、経済産業省のホームページで公開される認定企業リストや、専用のロゴマーク使用権は、企業ブランドの強化に直結するためです。
特に、就職活動中の学生や転職を考える社会人にとって、ホワイト500認定は「従業員を大切にする企業」という強力なメッセージとなります。
実際、就活生とその親の7割以上が、健康経営への取り組みを就職先の重要な決め手と考えているというデータもあります。
このように、認定取得は優秀な人材の獲得や定着率の向上につながり、人材採用・育成コストの削減も期待できます。
引用元:健康経営の推進について令和4年6月経済産業省ヘルスケア産業課
投資家からの評価向上とESG投資の観点
ホワイト500認定は、投資家からの評価向上にも大きく寄与します。
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目を集める中、健康経営はその「S(社会)」の重要な要素として認識されているためです。
実際、健康経営銘柄2023に選定された企業の株価は、東証株価指数を上回る形で推移しているというデータがあります。
さらに、経済産業研究所の研究では、健康経営施策と企業の利益率に正の相関があることが明らかになっています。
このように、ホワイト500認定企業は、ESGに配慮した経営を行っていると評価され、投資家からの信頼獲得や資金調達の円滑化につながる可能性が高まります。
これは、企業の持続的成長と企業価値向上に大きく貢献する要素となるのです。
引用元:健康経営の推進について 令和6年3月 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
ホワイト500認定企業の健康経営取り組み事例
ホワイト500認定を取得した企業各社は、従業員の健康増進に向けて独自の施策を展開しています。
メンタルヘルスケアから運動促進、ワークライフバランスの実現まで、各社の事業特性や企業文化を活かした多様なアプローチが特徴です。
ここでは、先進的な取り組みを行う企業の具体的な施策や成果をご紹介します。
ホワイト500を目指す企業様はぜひ参考にしてみてください。
アース製薬株式会社
アース製薬は、上席執行役員を責任者とする部門横断チーム「従業員と家族の健康を推進する委員会」を組織し、健康経営を積極的に推進しています。
月1回のミーティングを通じて社内外への情報発信を行い、従業員とその家族の健康増進に向けた取り組みを展開中です。
健康経営の柱となる施策として、歯科検診費用の一部補助を実施するとともに、男性の育休取得を促進するため、管理職向け研修や父親学級の提供、介護セミナーなども開催しています。
職場環境の面では、本社に健康相談ルームや休養室、カフェを完備。
また、坂越事業所では健康に配慮した食事メニューを提供する社員食堂をリニューアルするなど、快適な職場づくりに注力しています。
さらに、メンタルヘルスや女性特有の健康課題に関するセミナーを継続的に実施し、従業員の心身の健康維持・増進をサポートしています。
引用元:アース製薬株式会社プレスリリース
旭化成株式会社
旭化成グループは、2020年に制定した「旭化成グループ健康経営宣言」のもと、「人財がすべてである」という理念に基づいて健康経営を積極的に展開しています。
健康経営の重点課題として、メンタルヘルス不調、生活習慣病関連疾患、がん、喫煙、睡眠への対策に取り組んでいるところです。
特にメンタルヘルス不調対策には力を入れており、産業保健スタッフや専門機関によるケアを通じて、休業者率の低減に向けた取り組みを強化しています。
2021年4月には、健康経営推進体制を強化するため、国内9つの主要拠点の健康管理センターを本社の健康経営推進室の所属とし、一元的な推進体制を確立しました。
さらに2022年4月からは、この取り組みを国内小規模事業所および関係会社にも拡大し、グループ全体で健康経営の実現に向けて邁進しています。
引用元:旭化成株式会社ウェブサイト
アズビル株式会社
2019年7月に「azbilグループ健幸宣言」を制定し、総労働時間の削減やハラスメント防止などの「働き方改革」を推進。
また、一人ひとりの個性を尊重し、その特徴を活かす「ダイバーシティ推進」にも注力しています。
働き方改革の一環として、在宅勤務と出社を組み合わせるハイブリッド勤務に適したオフィス環境の整備を実施。
同時に、DXを活用した業務改革も積極的に推進。
また、経営層と社員、社員同士が活発に語り合える環境づくりに加え、メンター制度や短期の他部署インターン制度など、多様な施策を展開中です。
さらに、育児・介護等のライフイベントに応じた柔軟な働き方を可能にし、性別や年齢、国籍等にとらわれることなく、多様な背景を持つ社員一人ひとりが互いを尊重し、能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。
引用元:アズビル株式会社プレスリリース
SMBC日興証券株式会社
「従業員の健康」を重要な経営課題と位置付け、「健康管理」「メンタルヘルス」「ワークライフバランス」の3つを柱とした健康経営を推進しています。
健康管理においては、定期健康診断の受診率100%達成を目指すとともに、がん検診や人間ドックの費用補助を実施。
メンタルヘルス対策では、ストレスチェックの実施や相談窓口の設置に加え、きめ細やかな復職支援プログラムを提供しています。
ワークライフバランスの推進では、有給休暇取得の促進や時間外労働の削減、フレックスタイム制度の導入など、働きやすい環境づくりに取り組んでいるそうです。
また、従業員の健康増進を後押しするため、ウォーキングイベントの開催や健康セミナーの実施、社内スポーツ活動の支援なども積極的に行っています。
NTTアーバンソリューションズ株式会社
NTTアーバンソリューションズは、「健康経営」を経営戦略の一つとして位置付け、従業員の健康保持・増進に積極的に取り組んでいます。
健康診断の受診率100%達成と要再検査者への受診勧奨を徹底するほか、メンタルヘルス対策としてストレスチェックを実施し、その結果に基づいた職場環境の改善を進めています。
また、生活習慣病予防のための特定保健指導も実施中です。
従業員の健康意識向上を目指し、定期的な健康セミナーを開催。
運動習慣の定着を促すウォーキングイベントの実施や、禁煙支援プログラムの提供にも力を入れています。
さらに、ワークライフバランスの実現に向けて、有給休暇取得の促進や時間外労働の削減にも注力。
従業員一人ひとりが健康で活き活きと働ける職場づくりを推進しています。
大塚製薬株式会社
大塚製薬は、「健康」を事業の根幹に据える企業として、従業員の健康管理を重要な経営課題と位置付けています。
全社を挙げて「Otsuka Health Declaration」を策定し、健康経営を強力に推進しています。
主な施策として、定期健康診断の受診率100%達成と要再検査者への受診勧奨に注力。
メンタルヘルス対策では、ストレスチェックの実施と職場環境の改善を実施しています。
また、生活習慣病予防に向けた特定保健指導も展開中です。
従業員の健康意識向上を目的とした健康セミナーの開催や、運動習慣づくりのためのウォーキングイベントを実施。
さらに、自社製品を活用した独自の健康支援プログラムも提供しています。
加えて、ワークライフバランスの実現に向け、有給休暇取得の促進や時間外労働の削減にも積極的に取り組んでいます。
引用元:大塚製薬株式会社ウェブサイト
コニカミノルタ株式会社
「従業員の健康がすべての基盤」という認識のもと、会社と健康保険組合が一体となって健康経営を推進しています。
特に「健康リスク保有者の最少化」と「従業員の健康度の『見える化』」に重点を置いた取り組みを展開しています。
フィジカル面では重症化予防に注力し、その成果として2023年度の該当者数が2020年度比で約40%減少を達成。
メンタルヘルス対策も着実に成果を上げ、2023年度のメンタル不調による休務日数は前年度比約14%の減少となりました。
また、ウォーキングイベントの実施や「脳活」をテーマにしたプログラムの提供、女性の健康支援など、多角的なアプローチで従業員の健康増進を支援しています。
これらの継続的な取り組みが評価され、コニカミノルタ株式会社は2017年から2024年まで連続してホワイト500に認定されています。
ホワイト500認定取得への具体的ステップ
ホワイト500の認定取得は、段階的なアプローチが重要です。
ここでは、ホワイト500認定取得に向けた具体的なステップと、各段階で押さえるべきポイントを解説していきます。
すでに取り組みを始めている企業も、自社の現状を確認する指針としてご活用ください。
1. 健康経営度調査への回答
健康経営度調査は毎年8月後半から10月前半に実施され、企業の健康経営への取り組みを総合的に評価する調査です。
調査票は経済産業省の「ACTION!健康経営」ポータルサイトから入手できます。
調査では先ほど紹介した以下の大項目について詳細な回答が求められます。
- 経営理念・方針
- 組織体制
- 制度・施策実行
- 評価・改善
- 法令遵守・リスクマネジメント
各設問に対しては自社の取り組みを正確に反映させることが大切です。
2. フィードバックシートの確認
健康経営度調査の回答後、経済産業省から各企業へフィードバックシートが届きます。
フィードバックシートには次の情報が記載されています。
- 総合評価点
- 全回答法人の中での順位
- 各評価項目の得点と偏差値
- 業界平均との比較
ホワイト500の認定を目指す企業は、このフィードバックシートで上位50%以内に入っている必要があります。
ここで上位50%に入っていない場合、ホワイト500の申請資格を得られません。
3. 申請書類の提出
フィードバックシートで上位50%以内であることを確認できた企業は、11月から12月にかけて以下の申請書類を日本健康会議健康経営優良法人認定委員会事務局へ提出します。
- 健康経営優良法人認定申請書
- 誓約書
- 主な保険者の同意書
4. 健康経営優良法人認定委員会による審査
申請書類は健康経営優良法人認定委員会によって厳密な審査が行われます。
審査では次の点が重点的に確認されます。
- 健康経営度調査の回答内容の妥当性
- 申請書類の記載内容の正確性
- 認定基準への適合性
先述した通り、「経営理念」「組織体制」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の4項目はホワイト500の必須要件であり、これらを満たしているかどうかが重要な判断基準となります。
5. 認定結果の発表
審査を通過した企業は、上位500法人としてホワイト500に認定され、結果は翌年3月頃に発表されます。
ホワイト500認定企業には以下の特典が与えられます。
- ホワイト500のロゴマーク使用権
- 経済産業省のウェブサイトでの企業名公表
- 健康経営優良法人認定証の発行
なお、ホワイト500の認定期間は1年間です。
翌年度も継続してホワイト500認定を受けるためには、再度申請プロセスを経る必要があります。
ホワイト500の先にある健康経営の未来
ホワイト500認定企業を頂点とする健康経営の取り組みは、今後さらなる進化を遂げていくと予想されます。
健康経営は今後さらに企業価値向上に直結する重要な経営戦略として定着し、ホワイト500認定の意義もますます高まっていくことでしょう。
健康経営の未来は、以下の3つの方向性で発展していくのではないでしょうか。
グローバル展開と国際標準化
日本で生まれた健康経営の概念は、すでに海外からも高い関心を集めています。
ホワイト50認定企業を筆頭に、健康経営の国際的な普及が加速するものと考えられます。
現在進行中のISO規格策定の動きは、日本の健康経営手法を国際標準として確立させる可能性を秘めています。
これは日本企業の国際競争力を高める追い風となるでしょう。
テクノロジーを活用した次世代の健康経営
AIやIoTなどの先端技術を駆使することで、従業員一人ひとりの健康データをリアルタイムで把握し、個別最適化された健康増進プログラムの提供が可能になります。
ホワイト500認定企業を中心に、従業員の健康管理や予防医療において革新的な取り組みが次々と生まれることが期待されます。
社会課題解決との連携
健康経営は単なる従業員の健康増進にとどまらず、社会全体の健康寿命延伸や医療費削減といった課題解決にも貢献していくはず。
ホワイト500認定企業には、自社の取り組みを地域社会や取引先にも広げ、社会全体の健康増進を牽引する役割が期待されています。
記事のまとめ
今、健康経営はもはや一部の大企業だけのものではありません。
健康経営優良法人認定制度を通じて、多くの企業が従業員の健康管理を経営戦略の中核に据えはじめています。
ホワイト500はその道標であり、目指すべき理想像です。
しかし、認定取得はゴールではなく、持続可能な企業成長への新たなスタートといえるでしょう。
これからの企業には、従業員の健康を大切にする文化を育み、社会全体の健康増進に貢献する姿勢が求められています。
あなたの会社も、健康経営への第一歩を踏み出してみませんか。
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